宮崎国際音楽祭について

第27回宮崎国際音楽祭メインビジュアルについて

弥勒祐徳 ≪祝賀の舞≫(1974年/油彩)

かって宮崎県西都市の山間部にあった集落、寒川(さぶかわ)。 1989年の3月に最後の住民が離村し、400年続いた歴史に幕を下ろした。 画布一面に描かれているのは48年前、在りし日の寒川での祝言の様子。 花婿の家に家族、親族、近隣の人々が集まり、歌舞音曲を交えて村を支え次の世代を担う、若い二人の門出を祝賀する…。 慎ましい日常の中の特別な日に集う、温かな賑わいが伝わってくる。


弥勒祐徳(みろく・すけのり) [プロフィール]

1919年宮崎県西都市生まれ。2022年2月に103歳を迎える。満州、南方戦線と2度の徴兵。戦後、中学校の美術教員を勤めながら絵描きとして我武者羅に絵の制作に立ち向かう。我流である。「俺には師はいないから」ある美術評論家は「野武士」と表現した。モチーフは故郷の生きとし生けるもの。蛾には美と醜の対比を。西都原の桜には降り注ぐ愛情をキャンバスにたたきつけた。そして、西都市寒川の神楽に魂を奪われ、県内の神楽が「絵とは何か」を追求する修行の場となった。「絵は動く」神楽は神と人間、動物、魔物までが混然としたコスモスを描き出す。それはまさに音楽の世界でもある。「絵は生きる証」老画家のつぶやきである。