ぷれぽ

【ぷれぽ】本番の様子をレポート!SP① 最強のふたり「三浦文彰×辻井伸行デュオ・リサイタル」

更新日:2019年05月09日

 ヴァイオリン・三浦文彰さん、ピアノ・辻井伸行さんが前日に引き続き登場する今回のプログラムは、なんと2人のデュオ。日本を代表する若手演奏家の共演とあって、客席は今日も最上階までぎっしりですね~。

 

 さて、私の毎年の楽しみの一つが、この宮崎国際音楽祭の公式プログラム(税込み500円!お得です!)です。音楽監督の徳永二男さんをはじめ、世界の一流演奏家のトークや、管弦楽団の皆さんのプロフィールなどが掲載されていて、公演の内容をより深く知るのに役立ちます。そして今年はなんと、三浦さんと辻井さんのスペシャル対談が掲載されているんです!2人の素敵な関係が見えて、演奏を聞き終わった後でも充分楽しめる内容です。ぜひ手に取ってみてくださいね!

 

 

 まずは三浦さんのソロ演奏から。宮崎国際音楽祭の教育プログラムから参加している三浦さんは、もはや音楽祭の常連。笑顔で舞台に登場し三浦さんも、リラックスした雰囲気ですね♪

 

 水を打ったように静まり返った会場に、バッハ「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第3番ホ長調」のプレリュードが静かに規則正しく流れ出します。毎年出演している三浦さんですが、実は無伴奏でのソロ演奏をじっくりと聴く機会は少ないように思います。

 

 テンポの速い第6、7楽章もテクニックのすばらしさはもちろんのこと、第2楽章のフランスなどヨーロッパの山岳地帯ののどかな風景が目に浮かぶような、穏やかな音色や第4、5楽章の明暗がはっきりとしたメヌエットには大人の艶も加わっていて、会場のファンの心を再びがっちりとつかんだのではないでしょうか。

 

 

 前半2曲目は、デュオで送るブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調『雨の歌』作品78」。三浦さんに手を取ってもらって辻井さんが登場すると、会場から大きな拍手が起こります。2016年にツアーで共演して以来、食事やツアー中の余暇を一緒に楽しむなど(この辺りの裏話は、ぜひ公式プログラムをどうぞ♪)、普段から仲が良いという2人。前日にも見られましたが、辻井さんが一礼する場面で三浦さんが周囲に気を配るなど、2人の優しい距離感が観ていて微笑ましいですね。

 

 曲はドラマチックな第1楽章で2人それぞれのテクニックを存分に聴かせた後、ピアノの調べが切なく響く第2楽章へ。辻井さんの音色に三浦さんがうっとりとしているように見えたのは、私だけでしょうか?!

 

 

 ドイツの詩人クラウス・グロートの詩「雨の歌」の自作歌曲から主題を取ったという第3楽章は、ピアノの雨だれの音がヴァイオリンの音色を包み込んでいるよう。ブラームスが大親友ヨーゼフ・ヨアヒムのために作曲したというこの曲は、2人にぴったりです。

 

 

 後半は辻井さんのソロ演奏、ドビュッシー「2つのアラベスク」から。連続する音の中からきらきらとした光の粒が降り注いでくるような色彩豊かな音色に、会場中が魅了されています。辻井さんの卓抜した表現力は世界が認めるところですが、こんな素晴らしい演奏を実際に聴くことができるチャンスはそう滅多にありませんよね!この規模の音楽祭が本県で開かれているという奇跡に感謝です!

 

 

 最後は再びデュオで。三浦さんが「辻井さんの演奏で聴けたら」と選んだというフランク「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」。フランクが偉大なヴァオリニストだったイザイへの結婚の贈り物として書いたという作品で、クラシックファンならずとも聞いたことのあるフレーズ満載の名曲です。

 

 全編を通して、互いに呼応しあうヴァイオリンとピアノの旋律。恋を自覚するときのおののきにも似た神秘的な第1楽章から思いが一気に燃え上がるようなダイナミックな第2楽章も素晴らしかったのですが、愛への深い問いを表したかのような第3楽章には、第4楽章に続く苦悩とその後の喜びがにじみ出ていました。2人の互いに対する尊敬の念が転化されているのかもしれませんね!

 

 

 割れんばかりの拍手でカーテンコールは3回も!その度に笑顔で何かをささやき合いながら肩を組んで出てくる様子は会場中をほっこりさせてくれます。そして、なんと2人はアンコールに応えてくれました!曲はかの、三浦さんがソロ演奏を務めたNHK大河ドラマ「真田丸」メインテーマです!!辻井さんの伴奏で聴くことができるとは、なんて贅沢!!

 

 そして「もうないよ」とでも言うかのように笑顔で声援に応える三浦さん、この日何度も聞かれた「ブラボー」の大歓声と拍手は、2人の姿が見えなくなるまで続きました。

 

 

 このスペシャルな組み合わせで演奏が聴ける機会を、来年もぜひお願いします!!(文:劇場レポーターのPyonさん)

 

Photo:K. Miura