宮崎国際音楽祭について

アジアの音そしてアジアの心を
~第23回宮崎国際音楽祭を前に~

宮崎国際音楽祭総監督 佐藤寿美

宮崎国際音楽祭総監督佐藤寿美

平成8年(1996)にスタートした宮崎国際音楽祭に、13年までの6年間続けてアイザック・スターンさんが来られました。そのことが音楽祭の成立、継続の大きな原動力となったことは皆さまよくご存知のところです。「ヨーロッパやアメリカの音楽世界は耕され尽くそうとしている。これからはアジアだ。私は宮崎でその可能性を拓いてみたい」と語られたスターンさんは、音楽祭に併せてマスタークラスを開講し100人を越える日中韓の若者を直接指導されました。スターンさんが言い続けられたのは「曲芸のように超絶技巧を競うことはない。音楽は心の表現だ」という教えでした。

スターンさんが宮崎国際音楽祭に託されたものの一つが、「アジアの音、アジアの心」を求め続けて欲しいという願いだったのかもしれません。昨年22回目の音楽祭に、スターンさんから直接指導を受けた木嶋真優さんをドイツからお招きしましたが、今年はもう一歩踏み込んでスターンさんの言う「アジアの音と心」を代表する演奏家の方たちにお声を掛けました。韓国のチョン・キョンファさんと台湾のチョーリャン・リンさんは、アジアが誇るヴァイオリニストとして高い評価を受けてこられたお二人です。そこに日本の諏訪内晶子さんが入るソリスト陣はとても贅沢な顔ぶれですし、中国からやってくるチェロの趙静(チョウ・チン)さんも加わってどんな「アジアの心」が奏でられるか楽しみです。この数年の常連、ズーカーマンさんやマイスキーさんとはまた違う味わいを感じていただけるのではと期待しています。

500円コンサートの日には、宮崎が誇るカウンターテノールの藤木大地さんが音楽祭に初登場します。好評の「Oh!My!クラシック」は俳優の仲代達矢さんのお話とゆかりの音楽をお届けします。85歳になられて益々お元気な仲代さんが語る知られざる物語に驚かれる方も多いでしょう。「ポップス・オーケストラ in みやざき」は昨年に続いて宮川彬良さんにお越しいただきます。今年はどんなびっくり演奏が飛び出すのか興味津々です。音楽祭を締めくくるコンサート形式のオペラはプッチーニの「蝶々夫人」。おなじみになった中村恵理さんや福井敬さんの絶唱で、「ある晴れた日に」をはじめアジアが舞台となった代表的なオペラをお楽しみいただきます。

少し趣向を変えて試みる今年23回目の音楽祭。皆様の心の内に「アジアの音、アジアの心」が届きますよう願ってやみません。