連載B 今年の見どころ・聴きどころ
宮崎国際音楽祭は同音楽祭管弦楽団によるプログラムのほかにも、室内楽プログラム、それにこの音楽祭に集まった大物ソリストたちのリサイタル、さらには実験的コンサートや教育プログラムなど目が離せないものが並んでいます。
中心的となる15、22、24日のオーケストラコンサートでは、大編成のオーケストラの魅力が最大限発揮される音楽であるうえに、特に後半の2演奏会のプログラムはデュトワの最も得意とする曲目ですから、期待通りの響きがアイザックスターンホールにあふれることでしょう。
しかし同時に注目するのは、15日のコンサートです。私たちはしばしばレッテルをはって、芸術家を判断しがちです。フランスの演奏家にはフランス音楽、ドイツ系の演奏家にはドイツ音楽を期待する、といった具合です。けれどもこうした硬直的な思い込みは、生きた芸術である音楽に接するとき、しばしば本質を見失わせます。デュトワがフランスやロシア音楽を最も得意としていることは事実です。しかしオーケストラ音楽の古典的な作品群であるドイツ・オーストリア系の音楽をデュトワが指揮しない訳ではありません。外国のオーケストラの指揮者としての来日公演やNHK交響楽団の指揮者としての活動では、彼のこうした曲目を聴く機会は多くはありません。主催者や聴衆が芸術家を型にはめて見てしまい、デュトワの最も得意とするものだけを要求するからです。
その点この宮崎国際音楽祭管弦楽団を指揮して毎年行われる音楽祭は、彼のあらゆる音楽に接するまたとないチャンスです。その意味でベートーヴェンの「英雄」は、期待できます。
「エクスペリメンタル・コンサート」も注目したいものです。いずれも20世紀前半から後半にかけて作曲された中編成の室内オーケストラの作品が並んでいます。デュトワに信頼を寄せるヴァイオリニストのシャンタル・ジュイエは、数々の現代作曲家のバイオリン協奏曲をレパートリーとしており、こうしたアンサンブルには欠かせない存在です。抽象的な音の連なりの向こうに、私たちが忘れている人間の偉大さを感じられるかもしれません。
レオン・フライシャーやチョーリャン・リンといった名手と日本人ソリストの対決の場となる室内楽、今年こそ雨にならないでほしい「兵士の物語」、また時間があれば21日に日向市で行われる2台ピアノ版の「ラ・ヴァルス」と、翌日の管弦楽版とを聴き比べるのはいかがでしょう?
以上、書きつくせない魅力にあふれた、第13回宮崎国際音楽祭です。


音楽プロデューサー 淺岡壽雄氏

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