連載A 巨匠デュトワと宮崎国際音楽祭管弦楽団
シャルル・デュトワは現在、フィラデルフィア管弦楽団首席指揮者でアーティスティック・アドヴァイザー、ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団の音楽監督ならびに首席指揮者、NHK交響楽団の名誉音楽監督という重責を担っている巨匠ですが、常に若者の団体や宮崎のような音楽祭管弦楽団などを訓練し、短期間のうちに完成された演奏を組み立てていく名人でもあります。その意味で今年5年目になるデュトワと宮崎国際音楽祭管弦楽団の演奏が、これまで以上の結果を出すことは言うまでもないでしょう。
音楽祭管弦楽団いうと、常設のオーケストラとは異なるにわか作りの団体と考えられるかも知れません。オーケストラとはベルリン・フィルやウィーン・フィルを思い浮かべるまでもなく、長い歴史に培われた伝統を背景として楽員相互の信頼に裏付けされた確固とした団体です。しかし極めて優れた音楽家たちが一定期間中に優れた指揮者の下で活動する音楽祭管弦楽団は、新鮮なアンサンブルによって伝統的オーケストラとは違った魅力を発揮するのです。スイスのルツェルン音楽祭管弦楽団や、バイロイト音楽祭管弦楽団などがその例です。
宮崎国際音楽祭管弦楽団は、日本国内の優れた器楽奏者やオーケストラ団員、それにスイスのヴェルビエ音楽祭でのユース・オーケストラ、ヴェルビエ音楽祭管弦楽団のメンバーが加わった国際色豊かな音楽家によって構成されています。
かつてデュトワは新聞のインタビューに答えて、宮崎国際音楽祭管弦楽団について「日本一のオーケストラだ」と評しています。毎年聴いている宮崎の聴衆の方々には実感がないかもしれませんが、これは誇張ではありません。総合プロデューサーを務める徳永二男をコンサートマスターとするこのオーケストラは、文字通り日本の第一級の音楽家の集まりですし、限られた準備期間で多彩なプログラムを仕上げるのは、非常に困難な仕事だからです。
メディアの発達した今日では、放送や音楽ソフトによって、あらゆる音楽に接する機会があります。しかし音楽の生の体験なしには、その作品を本当に語ることはできません。生の体験でも優れていなければ意味がないのですが、指揮者自らが誇るオーケストラによる演奏であれば言うことはありません。


音楽プロデューサー 淺岡壽雄氏

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