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【公演レポート】演奏会〔2〕 「大野和士の世界」~日本が誇るマエストロ、音楽祭との出会い

更新日:2022年05月13日

5月8日、音楽祭にとって念願だった指揮者 大野和士さんの登板がついに実現!海外のオーケストラで指揮を振ることが多いので、大野さんの“音”を日本で聴けるのは東京と宮崎だけともいわれており、とても貴重。その演奏をこの宮崎で響かせることができたのは本当に喜ばしい限りです。
演奏会は当初、予定していなかった曲からスタート。大野さんから「今、世界中のコンサートで、冒頭に演奏されている曲を捧げます」という言葉とともに、バレンティン・シルヴェストロフ作曲「ウクライナへの祈り」を演奏しました。パイプオルガンがウクライナ国旗の青と黄色に染まり、まるで祈りをささげるように静かに音楽に聴き入る時間となりました。



プログラムの一曲目、ラヴェル作曲「クープランの墓」。大野さんの「メリーゴーランドに乗っているような、心地よい気持ちになれる曲」ということばの通り、音がくるくる心地よくはじけ、短い曲ながら印象的な旋律でした。
そして、バルトーク作曲の「ピアノ協奏曲第2番 Sz.95」。満を持してフランスのピアニスト ジャン=エフラム・バヴゼさんの登場です。アジアの太鼓に似たようなティンパニーの音と打楽的なピアノが対峙し、管楽器がやまびこのように同じ旋律を繰り返し、一時の油断も許さないような緊張感のある演奏。バルトークの音楽を知り尽くしているからこそ、あの難曲を踊るように演奏するバヴゼさん。演奏中、目を閉じて音に集中する様子や時折見せる笑顔がとても印象的でした。



演奏が終わると、割れんばかりの拍手が贈られました。 鳴りやまない拍手にバヴゼさんは、ドビュッシーの前奏曲集 第2巻 より2曲を演奏して応えました。



2曲続けて披露した、ドビュッシー作曲の「管弦楽のための映像より『イベリア』」は、スペインを題材にした曲で、冒頭、小粋なリズムで始まります。スペインの街角を彷彿とさせるような小粋な世界観のある演奏でした。



さらに、「交響詩『海』-管弦楽のための 3 つの交響的素描-」では、事前に大野さんのインタビュー動画でご覧になり、浮世絵 葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」にまつわるお話をきいて楽しみにされていた方も多いのではないでしょうか。時間とともに移りゆく海、凪になったあとの海、ありとあらゆる波を表現した楽曲です。大野さんが描き、管弦楽団と共に生み出した数々の音の粒を追いかけるように、会場は耳をそば立てて聴き入っているようでした。



お客様の感想では、「『ウクライナへの祈り』、胸にしみました」「『クープランの墓』は、オーボエとフルートの木管デュエットが音楽祭にふさわしい華やかな演奏でした」「『バルトーク』。大野さんの指揮がすべてを心地よく引き出していて、まとめているところが素晴らしかった。特に2楽章の風のうなり、そよそよと感じさせる弦楽器は素晴らしかった。その強弱のバランスが指揮者のなせる技と感じた」「バヴゼさんのピアノが想像の域を遥かに超えていて、オーケストラとコンタクトをとりながら演奏していて、一緒に曲を作り上げている様子に心が躍りました」「大野さんの指揮する音楽の渦に巻き込まれ、いつまでもこの中に浸っていたいと思いました」と、存分にお楽しみいただけたようです。ご来場いただきました皆さま、ありがとうございました。(広報H)
photo:K.Miura

ラヴェル:「クープランの墓」
バルトーク:ピアノ協奏曲第2番 Sz.95*
ドビュッシー:管弦楽のための映像より「イベリア」
ドビュッシー:交響詩「海」 - 管弦楽のための 3 つの交響的素描 -

【冒頭の演奏曲】
 ヴァレンティン・シルヴェストロフ:ウクライナへの祈り

【第1部アンコール】
 ドビュッシー:前奏曲集 第2巻 第12曲 花火
 ドビュッシー:前奏曲集 第2巻 第3曲 ヴィーノの門

【第2部アンコール】
 フォーレ:シシリエンヌ  

指揮:大野和士 ピアノ:ジャン=エフラム・バヴゼ*
宮崎国際音楽祭管弦楽団