ご来場を自粛されるお客様への払戻しのご案内 8月13日(金)から15日(日)の公演の開催について

ぷれぽ

公演レポート&インタビュー
―三浦文彰&辻井伸行 室内楽スペシャル「爽風無双のアンサンブル」―

更新日:2021年08月17日

 音楽祭も終盤にさしかかった8月13日、三浦文彰&辻井伸行 室内楽スペシャルを開催しました。チケットの発売直後から、あっという間に完売した注目度の高い本公演。

 1曲目はピアノ・辻井伸行さんの演奏によるベートーヴェン作曲「ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27-2『幻想曲風ソナタ(月光)』」で始まりました。言わずと知れた名曲で、ファンタジーのようなロマンチックな旋律で始まり、クライマックスに向けて一気に駆け抜けるような楽曲です。客席は辻井さんの些細な動きのひとつも見逃すまいと、じっと集中して聴き入っているようでした。

 続いて、思わず春の日差しの中を駆け出したくなるような旋律で始まった、ベートーヴェン作曲「ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調 作品24『春』」。辻井さんのピアノと三浦文彰さんのヴァイオリンの音がどこまでも優しく弾けて、会場を縦横無尽に響きます。圧倒的な実力で無双する二人が紡ぎ出す音楽に、客席は甘美な時間に身を委ねているようでした。




 休憩中に、プログラムをのぞき込んでなにやら楽しげに話をしているお二人がいたので、お声をかけさせていただきました。「いつもしぶい顔をしていそうなベートーヴェンがこんなに甘やかな曲を作るのかと思ってプログラムを読んだら『ベートーヴェンが伯爵令嬢との交際中に作った作品』と書いてあって、なるほど~と話していました」と、市内からお越しのニックネーム“天山”さんと奥様。ニックネームが素敵だったので由来をお伺いすると、「佐賀県出身なので!」と有明海などの景観を展望できる山が由来だと教えてくださいました。「辻井さんと三浦さんの演奏は、音楽祭で演奏される度に聴きに来ていますが、演奏会を重ねる度に息が合ってきているように思います」とお話しくださいました。音楽祭には毎年、マイシートで観劇してくださっているという天山さん。ありがとうございました。

 休憩を挟んで演奏されたのはシューベルト作曲「ピアノ五重奏曲 イ長調 D667 『ます』」。特に第4章は学校の授業で学んで覚えた方も多いのではないでしょうか。シューベルトが22歳で若々しく、希望と幸福にあふれていた頃の作品です。三浦さん、辻井さんに加えて、ヴィオラ・須田祥子さん、チェロ・遠藤真理さん、コントラバス・池松宏さんが登場。アンサンブルの音色が豊かに溶け合い、演奏陣の時折見せる、微笑むように演奏する姿が印象的でした。



 鳴り止まない拍手に何度もカーテンコールに応え、そのたびに須田さんや遠藤さんの女性たちにエスコートされる辻井さんが「皆さま、本日はコンサートにお越しいただきまして、本当にありがとうございました」とご挨拶しました。そして「せっかくだから、三浦さんからも何か一言いただければ……」と話を振られる三浦さん。「こんなにたくさんの方にお越しいただき本当にうれしいです。今回は『ます』を演奏しましたが、『ます』といえば池松さんは世界的な『ます』のコントラバス奏者であり、そして“釣り人”でもあります。ぜひ、池松さんにもしゃべっていただきたいですね」と会場の笑いを誘いながらバトンタッチされると「せっかくですから、アンコールに、先ほど演奏した『ます』の第4楽章のラストを演奏します」と池松さん。爽やかな旋律がいつまでも耳に残る美しい演奏で、終演後に思わずメロディを口ずさみながら会場をあとにしました。(広報H)





Photo:K.Miura

【演奏曲】 
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 「月光」 作品27-2
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ長調 「春」 作品24
シューベルト:ピアノ五重奏曲 イ長調 「ます」 D667

ヴァイオリン:三浦文彰
ピアノ:辻井伸行
ヴィオラ:須田祥子
チェロ:遠藤真理
コントラバス:池松宏