ぷれぽ

【ぷれぽ】本番の様子をレポート!演奏会〔5〕プッチーニの世界「青春の光と影」

更新日:2019年05月23日

 4月28日から22日間に渡り、県内を鮮やかな音の色彩で飾ってくれた第24回宮崎国際音楽祭も、最終日となりました。毎年、国内外で活躍する一流のオペラ歌手を迎え、オペラの第一人者でもある広上淳一さんの指揮が導くプッチーニの歌劇の世界が華やかに繰り広げられます!

 

 本県ではまだまだ歌劇を観劇する機会は少ないので、毎回、この機会を逃すまいと多くの人が足を運んでいるようで、今年も変わらぬ盛況ぶり。あいにく外は台風のような大雨ですが、情熱あふれるクラシックファンの皆さんがあふれかえっています。

 

 今年のテーマは「青春の光と影」、演目は「ラ・ボエーム」。ときは19世紀のパリ。屋根裏部屋で共同生活を送る4人の芸術家、詩人ロドルフォ、画家マルチェッロ、哲学者コッリーネ、音楽家ショナールと、お針子ミミ、パトロンを渡り歩いて生きるムゼッタという若い男女が織りなす青春群像劇です。

 

 

 

 出演者の顔ぶれも毎年本当に豪華なのですが、今年もヒロイン・ミミ役に中村恵理さん、相手役のロドルフォに福井敬さんをキャスティング。そのほかの出演の皆さんも実力派ばかりで、何度かこの音楽祭に出演されている方もいらっしゃるので、県内にもファンを増やしている様子。ロビーでは「今日の福井さん楽しみ!」「また中村さんの歌が聴けるのはうれしい」などの会話が聞こえてきます。

 

 

 開演前には、これも近年恒例となっている、指揮者の広上さんと徳永二男音楽監督によるプレトークもありました。広上さんは、プッチーニ自身をモデルにしたと言われている音楽家ショナールの舞台回し的な役どころや、普段はオーケストラ・ピットに入る楽団がステージ上に存在することで生まれる音の迫力など、今回の上演の魅力を解説。第2幕に用意されているという「仕掛け」にも触れ、「舞台は生ものなので、その新鮮さを楽しんで」と呼び掛けました。徳永音楽監督は、今年の日程を振り返り、「どの公演も実力派ばかりが揃っていることをあらためて実感する素晴らしい内容だった」と語りました。

 

 

 いよいよ開幕。管弦楽団をリードするコンサートマスターには、なんとライナー・キュッヒルさん!この上なく豪華な顔ぶれが実現しています。広上さんの、物語のすべての心情を表現するかのように全身で表現する情熱的な指揮も絶好調ですね!

 

 第一幕はやはり、ロドルフォ福井さんとマルチェッロ甲斐栄次郎さんの掛け合い!若者らしいエネルギーと社会への反骨精神の中に、理想の恋愛に憧れる様子が微笑ましくも楽しくて、会場もどこかわくわくとした雰囲気に包まれて、大きな拍手が起こっています。

 コッリーネ伊藤純さんとショナール今村雅彦さんが加わり、青年たちの愉快なやり取りが軽快に交わされていきます。

 

 

 ヒロインのミミ役中村さんの登場。福井さんの「冷たい手を」、中村さんの「私の名はミミ」での繊細な表現と、二重唱「ああ、愛しき乙女」での爆発的な歌唱に、会場は早くもクライマックスがやってきたような盛り上がりです!

 

 

 お楽しみの第二幕では、美女ムゼッタ鷲尾麻衣さんの登場。スパンコールの衣装がとても似合う華やかな美しさで、会場を魅了します。凛とした美しさを持つ中村さんとの対比も見事で、お二人の存在感がますます際立ちますね!さて、老紳士と訪れたレストランで、元恋人のマルチェッロと再会したムゼッタは、マルチェッロの気を引こうと「ムゼッタのワルツ」を歌いますが、なんと鷲尾さんが、指揮者の広上さんの手を取ったり、体を密着させたりと魅惑的な絡みを展開。なるほど、これが「仕掛け」か!と会場の皆さんも大笑いです!

 

 

 さらに、老紳士にお勘定を押し付けようと、レストランから全員で去る場面では、県吹奏楽団の有志による鼓笛隊が、軍の鼓笛隊に扮して客席の下手側から入場!

 毎年のこのプログラムにはない、観客を巻き込んだ「仕掛け」のおかげで、いつもよりさらに舞台や歌手の皆さんが身近に感じられ、演目の内容もすっと入ってくるような気がしますね!

 

 

 物語は最終章の第4幕。政治的にも経済的にも市民が豊かではなかった時代、ミミは不治の病に侵されます。その貧しさゆえに一旦は別れたミミとロドルフォですが、死にゆくミミが最後に選んだのはやはりロドルフォ。福井さんと中村さんが体を寄せあい、見つめ合いながら歌う愛の歌は、圧倒的な歌唱力の中にきめ細やかな表現力がしっかりと乗り、会場中が若い二人の悲しみに彩られていきます。それにしても、中村さんの艶と気品にあふれた声、福井さんのハリと清涼感のある声は本当にすてきです!

 

 

 「ブラヴォー」の声とスタンディングオベーションが起こる大喝采で幕を閉じましたが、感動は冷めやらずアンコールへ。第二幕の鼓笛隊の場面が再び演奏されると、今度は観客の皆さんも、誰からとなく始まった手拍子で参加します。ムゼッタとマルチェッロの熱い抱擁の場面では、客席から囃し立てる声も上がるほどの盛り上がりでした!

 

 

 最高の熱気で閉幕した今年の「宮崎国際音楽祭」。私だけではなく、来場した皆さんにも来年への期待が早くも高まる最終日でした♪(文:劇場レポーターのPyonさん)

 

 

Photo:K. Miura