ぷれぽ

【ぷれぽ】本番の様子をレポート!「宮川彬良のびっくり音楽講座」

更新日:2019年05月16日

 

 今日イベントホールで行われるのは、作曲家・宮川彬良さんによる音楽講座「宮川彬良・宮川安利の誘う 貴方の知らない『ウエストサイド物語』」。

 18日に開かれるスペシャル・プログラム「ポップス・オーケストラinみやざき~宮川彬良のびっくりアカデミー~」の関連企画で、今年の演奏曲であり、映画や舞台で世界中の人々を虜にしたあの不朽の名作『ウエストサイド物語』の楽曲について、宮川さん自身による解説が聞ける、まさにスペシャルな企画です!

 

 宮川さんの担当されるプログラムは、音楽に詳しくない私のような人たちにでもとても分かりやすく、ユーモアたっぷりの解説付きで毎年大人気。すでにチケットは完売しており、開場前から入口には多くの人が並んでいますね~。

 

 そんな宮川さん、ステージに登場しただけで割れんばかりの大拍手!人気の高さが分かります!今回は宮川さんの次女で歌手・ダンサーの安利さんとともに、「ウエストサイド物語」の楽曲の秘密をちょっとだけ先に教えてくれるそう。楽しみです!

 

 

 

 まずは「プロローグ」「サムシング・カミング」「マリア」「クール」の4曲をもとに、作曲家バーンスタインの「仕掛け」が明らかにされていきます。

 

 …と、その前に!「ウエストサイド物語」をまだ見たことがないという方に、ごく簡単にあらすじをご紹介しておきますね!

 

 「ウエストサイド物語」は、1961年にアメリカで公開されたミュージカル映画です。1950年代のアメリカが舞台。現代版「ロミオとジュリエット」とも評されるように、敵対する二つの非行グループ、ヨーロッパ系アメリカ人の「ジェット団」に属するトニーとプエルトリコ系アメリカ人の「シャーク団」のリーダーの妹・マリアの悲恋を描きました。人種差別、移民問題、貧困など社会の格差を背景に「不滅の愛」の存在を世に問い、大ヒットした作品です。

 

 さてさて、バーンスタインの隠した「仕掛け」です。宮川さんの研究によると、音楽理論における「五度圏」で正反対の位置にあり、「仲が悪い」(音が混ざりにくい、という意味でしょうか)音である「ド」が「ジェット団」、「ファ♯」を「シャーク団」のイメージとして、この二音を効果的に主題に使った曲の構成になっているのだそう。

 

 

 この4曲をCDや、「仕掛け」を強調した宮川さんのピアノ演奏で聴き、さらに安利さんが「マリア」を朗唱。本場ニューヨークで修練を積んでいる安利さんの歌声や朗読、すぐ目の前に舞台の1シーンが再現されているようで、素晴らしいですね!

 

 宮川さんの爆笑必至のトークを交えた解説に、会場は大盛り上がり。話題は専門的な音楽の内容なのに、観客の皆さんも納得のうなずきや感嘆の声を返しています。

 

 

 続いて「アメリカ」に隠された仕掛け。アメリカ合衆国の国家のメロディーを、いろいろなキーに変えて潜ませることで、「アメリカ」という国をさまざまな視点から見ているという、当時の移民たちの心情を表現しているのでは、という解説。これまた目からウロコですね~。

 

 途中、宮川さんが休憩で少しだけ舞台袖に下がった場面では、「ダンスでも踊っておいて」という父の無茶ぶり??に、即座にキレのあるダンスで応えて会場を沸かせる安利さん。素敵です!

 

 

 また舞台版で有名な曲「サムホエアー」を、再び安利さんの朗唱を交えて紹介。二つの勢力の終わることのない諍いに疲れ、この現実から逃れて愛を成就したいという願うトニーとマリアが、理想の世界を求める思いを歌った曲です。「ミ」を主音にしながら、この主音になかなかすんなりと行きつかないメロディー構成で進んでいくこの曲。どこまで行ってもたどり着かない理想郷だけれども、一番最後に戻ってくる主音=今いるその場所こそが、いるべき場所なのだという話には、心動かされました。

 

 宮川さんは最後に、抗争に巻き込まれて撃たれ、マリアの胸の中で息絶えたトニーの葬送のシーンで流れる曲をもとに、バーンスタインがこの曲に込めたであろう思いについて触れました。「ド」「ファ♯」という交わりにくい二音ではありますが、「ド」を使った主旋律に伴奏をつけると、その伴奏の中にうまく「ファ♯」が倍音として隠れている。だからこそ、理解し合えない存在は、きっとこの世にはないはずだ……。

 

 ユーモアの中に多くの感動を残し、楽しい1時間は終わりました。

 

 

 18日の本番では、宮川さんの指揮で、ミュージカル俳優の井上芳雄さんと木村花代さんが歌を担当されるとのこと。お楽しみに♪(文:劇場レポーターのPyonさん)

 

 

Photo:K. Miura