宮崎国際音楽祭について

音楽監督ごあいさつ

宮崎国際音楽祭音楽監督
徳永二男

 初夏のような陽射しに、緑と花々が鮮やかな季節となりました。音楽の花咲く宮崎国際音楽祭が開幕致します。今年は、世代を超えて脈々と受け継がれる音楽や演奏家を意識して企画いたしました。

 24回を迎える音楽祭、その歴史の中で数々の演奏家たちが名演を繰り広げてきました。アイザック・スターンに導かれて参加したピンカス・ズーカーマンは、今や最後の巨匠です。ミュージック・アカデミーで学び、ズーカーマンも次世代のホープとして期待した三浦文彰は、すでに破竹の勢いで世界を駆け巡っています。

 世代を超えるのはお客様も一緒です。『子どものための音楽会』を聴いた子どもたちが、それをきっかけに演奏家になったり、お客様として来場してくださいます。先日、横浜のラジオ番組に出演しましたが、司会の方から、宮崎出身であること、『子どものための音楽会』を聴いてクラシック音楽の虜になったと聞かされました。アナウンサーになってからは、徳永先生をゲストに迎えるのが夢でしたとも言われ、気恥ずかしさと同時に、この上ない喜びを感じました。このような継承こそ、クラシック音楽の真髄であり、この音楽祭の財産です。今回のズーカーマンと三浦文彰の共演や若き世代を代表する辻井伸行と三浦文彰の共演は、その象徴的演奏会です。歴史の重みということでは、『エクスペリメンタル・コンサート』で日本のクラシック音楽の黎明期を西田ひかるさんとともにひも解くことは、興味深い体験になることでしょう。

 『Oh!My!クラシック』、『500円コンサートの日』や『ポップス・オーケストラinみやざき』は、クラシック音楽に縁遠かった皆様に楽しんでいただき、音楽祭のあらたな歴史を彩ってくれています。そして最終日恒例となったオペラは、「ラ・ボエーム」です。

 このように、歴史と伝統にあらたな趣向も取り入れ継承されてきたのが宮崎国際音楽祭です。スターンが次世代への道を拓き、ミュージック・アカデミーで学んだ学生たちが、出演者として宮崎に帰ってくるという循環と世代を超える継承の歴史。私たちは、その誇りと自信を礎に、次の時代に進みたいと思います。

 この場を借りて、宮崎国際音楽祭の開催に御尽力頂きましたすべての方々に心より感謝申し上げます。地元の皆様との暖かい交流が、演奏家にとっての楽しみにもなっていることを申し添えます。

 では、宮崎国際音楽祭を心ゆくまでお楽しみください。